欧州を中心にビール会社の再編が急展開で進んでいる。ハイネケン(オランダ)とカールスバーグ(デンマーク)は、一月末に英ビール最大手のスコティッシュ・アンド・ニューカッスル(S&N)を総額百五十三億ドル(約一兆六千億円)で買収することで合意した。 今回の買収が興味深いのは、ビール業界の向かう先を示しているからだ。日米欧の先進国でビール消費は頭打ちになっており、世界のビール会社は戦略の転換を迫られている。その一つは、傘下ブランドを増やすことと「プレミアム・ビール」による高級化であり、もう一つは需要が急増している中国、ロシアや中南米など新興市場国の開拓である。新興市場国では生活の西欧化が進んでおり、ビール、ワイン、タバコなど嗜好品の有望市場になっている。 S&Nの西欧事業などを手に入れるハイネケンは、英国でのプレミアム・ビールの販路を得るほか、「クローネンブルグ」などのブランドを増やすことで収益力アップを図る。これに対し、中国、ロシア事業を手に入れるカールスバーグは、S&Nとの合弁会社BBHが保有するロシアのビール会社、バルティカを傘下に収め、消費量世界三位(二〇〇六年)と急成長する同国でのシェアを現在の三六%から高めることを狙うなど、新興市場国での拡大に軸を置く。

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