「キツネ狩り」。海外に逃亡した中国の腐敗幹部を発見して中国に送還する工作のことだ。ホワイトハウスで行われた習近平国家主席とオバマ米大統領との首脳会談では、この問題も議題になった。
 中国側が要求していた胡錦濤前国家主席の元側近、令計画氏(58)の実弟で米国在住の令完成氏(57)の引き渡しをめぐって、双方は火花を散らしてきた。しかし、首脳会談の結果から見ると、オバマ政権は令完成氏の中国への送還を拒否したようだ。
 首脳会談後の発表資料によると、腐敗に対する両国司法当局間の協力について、両首脳は「犯罪捜査、逃亡者の身柄送還、資産の回収の問題で協力を拡大する」ことで一致したとだけ記している。

訪米前に送還を要請

 中国側は習訪米の約2週間前、中国共産党の治安担当、孟建柱政法委員会書記を習氏の特使として米国に急きょ派遣した。日本のメディアは、孟氏がジョンソン国土安全保障長官やコミー連邦捜査局(FBI)長官、ライス大統領補佐官(国家安全保障問題担当)らとサイバー問題で妥協点を探ったと伝えていた。
 しかし、香港の英字紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、孟氏は米側に対して、令完成氏ともう1人、不動産業の郭文貴氏の送還を要請したという。郭氏は、今年失脚した馬建元国家安全省次官の盟友で、2人は北京市副市長の殺害を企図した疑いがかけられている。
 ワシントンでは、オバマ政権は中国側が対米サイバー攻撃の抑制と引き換えに、2人の送還を認める取引を検討中との憶測も出ていた。だが、令完成氏の情報源としての重要性はまったく別次元の問題だった。

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