10月9日、ノルウェーのノーベル委員会が、今年のノーベル平和賞を発表した。授賞が決まったのはチュニジアの通称「国民対話カルテット」。

 カルテットとは、チュニジアで建国以来大きな力を持つ「チュニジア労働総同盟(UGTT: Union Générale Tunisienne du Travail)」と、経営者・職人団体の「チュニジア産業貿易手工業同盟(UTICA: Union Tunisienne de l’Industrie, du Commerce et de l’Artisanat)」、人権団体の「チュニジア人権擁護連盟(LTDH: La Ligue Tunisienne pour la Défense des Droits de l’Homme)」、法曹の「チュニジア弁護士会(Ordre National des Avocats de Tunisie)」の4団体の代表による事実上の合議体を指す。立憲議会が対立で行き詰まり、街頭でのデモが民主化移行プロセスを阻害しそうになった時、それぞれの団体が支持政党・関係勢力への影響力を背景に、対話で政治的対立を乗り越えてコンセンサスを形成したことが、憲法制定、組閣・内閣改造、選挙による政権交代といった難関で、軍の介入やデモ隊の実力行使といった制度外の暴力を介在させずに移行期プロセスの制度内で体制変革を進めることを可能にした。非公式の合議体が、民意を汲み上げつつ、公式の議会制度を守ったのである。

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