「中国のカネ」に目が眩んだ「英国への失望」

執筆者:会田弘継2015年11月6日

 10月は大国間の大きな「戦略的」動きがくっきりと見えた月だった。

 日米など12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)が、5年半に及んだ難交渉の末まとまった。と、思いきや、中英が7兆円超という経済協力で合意した。中国は英国で原発を建設、国外で初の人民元建て国債発行をロンドンで始める。「一帯一路」と呼ばれる中国の新シルクロード構想と密接につながる動きだ。

 TPPが日米を軸とする経済大戦略なら、「一帯一路」は欧州とつながろうとする中国の大戦略だ。

 その中国の南シナ海での強引な海洋進出に対し、アメリカが「待った」をかけた。中国が人工島をつくり、12カイリの「領海」を主張する海域に、イージス駆逐艦を送り込み航行させた。中国の有無を言わせぬ海洋進出に抗議はすれども、なす術もなかった近隣諸国は快哉を叫び、溜飲を下げたが、さて、このあとアメリカはどう進むのか……。

 中国に対しては押しに出たアメリカだが、目を西に転じれば、中東ではロシアに追い込まれている。泥沼化したシリア内戦はロシアが軍事介入したことで新たな局面に入り、ロシア主導で周辺各国を巻き込んだ和平への動きが活発化している。アメリカの中東での統率力がかすんでいる。

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