バチカン内で亀裂が深まっている。「改革」を旗印とするローマ法王フランシスコとこれに反発する保守派という図式だ。法王の脳腫瘍説が流されたり、前任者ベネディクト16世を事実上、辞任に追い込んだ「バチリークス」事件を彷彿とさせる機密文書漏洩事件が発生したりしている。フランシスコは、信者を前に「嘆かわしい事が起ころうとも全ての支持者とともに改革を進める」と改革断行の決意に揺らぎがないことを宣言し、抵抗勢力に対峙する姿勢を示している。

保守派の攻撃

 10月21日、イタリアの新聞「コティディアーノ・ナツィオナーレ」に、法王フランシスコに脳腫瘍がみつかった、という記事が掲載された。世界的権威の日本人医師が、手術は必要なく治療可能と診断した、とも付け加えている。これに対しバチカン報道官は即座に、「根拠がない」「非常に無責任で不公正極まりない報道」と言葉を尽くして全面否定した。婚姻や同性愛の問題を争点とする世界司教会議が開催中というタイミングだっただけに、保守派が仕掛けたのではないかと見られた。アメリカ人記者で長らくバチカンを取材するジョン・アレン氏は、司教会議がまとめる提言を受けて法王が何らかの改革方針を示す予定であることから、その判断の健全性に疑いを投げかけておこうとした試みだと見る。また、「バチカンの長い歴史の中で、法王の健康問題に関するうわさが浮上し当局が否定したものの、後になって真実であったという例がある」ため、報道官の全面否定でも皆が納得するわけではなく、この問題が尾を引く可能性を指摘する。

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