「ジェトロの理事」という仕事

執筆者:平野克己2015年12月1日

 10月1日付けで日本貿易振興機構(ジェトロ)の理事を拝命し、古巣であるアジア経済研究所の経営と、ジェトロ全体においては中東・アフリカ・中央アジア地域、国内では中部地方を担当することになった。若い時分に大使館勤務や財団勤務、10年程前にはジェトロ・ヨハネスブルグ事務所長を経験してはいるが、それにしてもエライことになった。

 

試合場のアスリートのような気分

 ジェトロの理事長(Chairman)は経産省出身の石毛博行氏、副理事長(President)は経産省から出向の赤星康氏、その下に私を含め6名の理事(vice-President)がいる。外務省と農水省からそれぞれ1名、本部出身が2名、アジ研から2名で、アジ研からはインドネシア研究で有名な佐藤百合氏が私と同時に就任した。

 日常的に赤坂のジェトロ本部と幕張の研究所を行ったり来たりし、30分から1時間の単位で別々のチームや来客と向き合いつつ、細切れの仕事を順にこなしていく。スケジュールは秘書室がつくるので、なにが待っているか出勤するまではっきりしない。1本の原稿と朝から晩まで取っ組みあうこともあった研究者時代とは真逆だ。私のなかになにも蓄積しない、反射神経が頼りの、行き当たりばったりである。見返す時間がないので書類を手元に貯めておくこともない。半分くらいに整理して理事室に運び込んだ蔵書も、まだ手にとったことがない。

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