30年ぶりの「衆参同日選」論に「2つのシナリオ」

執筆者:野々山英一2015年12月4日

 衆参同日選説がにわかに飛び交い始めた。
 来年7月に予定される参院選に合わせて衆院を解散し、同日で投開票をしてしまおうというものだ。「7月10日投票」という日程まで、ひとり歩きしている。
 自民党の佐藤勉国対委員長は11月28日の講演で「来年、ダブル選があるかもしれない」と発言。翌日、谷垣禎一幹事長も「いろいろな可能性はある」と含みを持たせた。
 誰ひとり「やる」と断言してはいない。ただ、衆院解散は首相の専権事項。党幹部といえども、話題にすることはタブーだ。それだけに谷垣氏らの発言は、永田町にさざ波を立てるに十分な効果を与えている。過去同日選は1980、86年に2回行われ、いずれも自民党が勝っている。もし来年、同日選になれば30年ぶりとなる。

鉄則は「早期解散」

 実は同日選論には、2種類ある。どちらも「7月10日」を念頭に置いているのだが、そこに至る政策決定の道筋や想定する争点が違う。
 1つ目のシナリオは消費税率が2017年4月に10%に上がるのを前提とした話だ。税率を上げると、景気にも悪影響が及び、政府・与党の支持は下がる。さらに同年6月には東京都議選がある。前回2013年の都議選は、自民、公明の両党は全候補者が当選する完勝だっただけに、次回は議席を減らすのは覚悟しなければならない。
 消費税アップ、景気後退、支持率減、都議選敗北……という負のスパイラルに巻き込まれると、解散を打つタイミングを失ってしまいかねない。
 過去の選挙データを調べると分かるが、任期満了に近づいた衆院選は、与党が苦戦することが多い。最近では、解散のタイミングを見失った麻生太郎首相のもとで2009年に行われた任期満了に近い衆院選で、自民党が大惨敗、下野したことが記憶に新しい。
「解散を能動的に打てるタイミングで早めに打つ」というのが長い間政権を維持してきた自民党の鉄則。それに沿えば、来年の同日選は、魅力的な日程なのだ。
 この「消費税増税前に」という発想の同日選論は、実は今春ごろから自民党執行部や選対関係者の間で極秘に温められてきたシナリオだ。

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