シリアをめぐる闘争

 シリアとイラクをめぐって、水面下での交渉が動き始めている。ロシアが9月30日に開始した対シリア軍事介入は、現地の諸勢力と地域大国や域外大国・超大国による、複雑な外交駆け引きと関与競争を引き起こしている。シリアやイラクの中央政府や民兵集団、クルド人やトルクメン人勢力などの現地の諸勢力と、トルコ、イラン、サウジアラビアなどの地域大国が、米・露の域外大国を引き寄せながら、それぞれの利益を追求する。イスラエルやカタールなども、ピンポイントで重要な役割を帯びる。

 11月14日にウィーンで開かれた「シリア国際支援グループ」の国際会議では、2016年1月1日を目処に和平交渉を開始し、6カ月以内に挙国一致内閣を成立させ、新憲法を制定して18カ月以内に自由で公正な選挙を実施する、というタイムテーブルをロシアは掲げてみせた。これに米国は歩み寄りの姿勢を見せ、米側陣営のトルコやサウジアラビアが、それぞれに対「イスラーム国」の方策を取りつつ、影響下にあるシリアの反体制勢力や武装集団を統御して和平交渉の席に着かせることを求める。米露は、12月18日近辺に、ニューヨークでシリア関係国会議を開催し和平交渉の立ち上げに向けて弾みをつけることを模索しているが、米国に「見捨てられる」との危機感を強めるトルコやサウジアラビアは、自立化・独自路線を強めており、従順に従うとは考えられない。

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