「正統性と権威が、ノドから手が出るほど欲しいのでしょう」 中国では、三月五日の故・周恩来首相生誕百十周年に際し、各地で記念活動が展開された。「かつてない盛大な規模」にするよう指示した胡錦濤総書記の狙いを、中国筋が解き明かす。 二月二十九日、人民大会堂での記念座談会には、九人の政治局常務委員すべてが出席、胡は講話で強調した。曰く――周は、人民が災害や困難に陥れば「常に姿を現した」。しかも「あらゆる派閥や地方主義に反対し」「自己や親族、友人のために権力を利用しなかった。個人的な財産も一切残さなかった」。さらに「総理は人民に奉仕する総服務員」との周の発言を「公僕たる共産党人の模範」と持ち上げ、「周ら老革命家の偉大なる精神を継承し発揚する現在の党中央指導集団の決意を示し」(新華社)、政権の正統性を訴えたのだ。 周の故郷、江蘇省淮安に周の親族や革命元勲の子女ら百三十人の大代表団を送り込んだのも見逃せない。毛沢東らの記念活動では、この種のイベントは見られなかったからだ。 党中央弁公庁は、文化大革命前に党政治局員、国務院(政務院)副総理、全国人民代表大会副委員長、全国政治協商会議副主席より上の職にあった高級幹部および軍の十大元帥・大将の親族に、各ファミリー二名の参加を呼びかけた。トウ小平、任弼時、陳雲、李先念、陳毅、賀龍、聶栄臻ら建国元勲の二代目が大挙して参加。「いまだに多くの人民が畏敬する英雄・周恩来の権威を借り」古参幹部子弟とその周辺の支持集めを図ったわけだ。

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