年末年始は「相場が跳びやすい」、つまり、薄商いの中で急騰、急落が起きやすい。外国為替が典型だが、原油相場も時として年末年始に大展開が起きる。2008年の正月明けにニューヨークのWTI(ウエストテキサス・インターミディエート)原油先物が史上初めて1バレル100ドルを突破した。2003年頃に始まった上昇基調は途中、下落局面はあったものの遂に原油価格を3ケタに乗せた。その年の夏には150ドル間近に迫り、米ゴールドマンサックスは「200ドルは時間の問題」とはやし立てた。その後の展開は語るまでもないだろう。「盛者必衰」を思わせるように、原油価格は2014年秋以降急落し、30~40ドル台を落ち着きなく変動している。2016年の年明け以降に相場が大きく動き、20ドル台に落ち込んでも誰も不思議には思わないだろう。

 

3つの「新要因」と1つの「増幅要因」

 2003年以降の上昇局面を少し振り返ると、原油市場には3つの新要因が加わり、1つの既成要因が増幅した。すでに言い古されたことばかりだが、改めて整理してみたい。

 新たな要因の筆頭は、「地政学要因」だ。2001年の「9.11同時多発テロ」への報復と称し、大量破壊兵器の危険性除去を名目として、ブッシュ米政権(当時)はイラク攻撃に踏み切った。これで世界最大の産油地域である中東は流動化した。イラクのフセイン政権が打倒され、2010年に起きた「アラブの春」で、チュニジア、エジプト、リビアでも独裁政権が倒された。供給国が不安定化すれば石油市場は当然動揺し、ニュースに対する原発市場の反応は増幅するようになった。

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