環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の合意など2015年は安倍晋三首相にとって大きな外交成果の年となったが、掉尾を飾ったのがオーストラリアのマルコム・ターンブル首相の師走の訪日だった。

 この3年、安倍首相がことのほか強い個人的関係を築いてきた首脳が3人いる。トルコのエルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領、そして豪州のアボット前首相だ。

 特に知日派のアボット前首相とはウマが合った。2013年9月に就任した前首相は安倍首相を「最高の友」と呼び、両首脳の下で経済連携協定(EPA)や「防衛装備品及び技術の移転に関する協定」の締結、毎年の首相相互訪問の合意など、日豪関係は飛躍的に深化した。それだけに昨年9月、前首相が与党・自由党の党首選でターンブル氏(前通信相)に敗れたことは日本側に衝撃を与えた。

 前政権が進めた日本との関係深化の外交路線を新首相が引き継ぐのか、それともラッド労働党政権(2007年~2010年)の時のように対中関係重視に転換するのかは、安倍政権の対アジア外交の基盤にかかわる問題だった。場合によっては東・南シナ海で威圧的行動を強める中国を念頭に置いた日米豪の安全保障・防衛協力の枠組みや、日本の潜水艦建造売り込み計画にも影響する。

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