国産初のジェット旅客機と囃される「MRJ(ミツビシ・リージョナル・ジェット)」。四千億円以上とされる事業費を投じた三菱重工業は「二千億円台の赤字までなら事業化する」(佃和夫社長)と意気込むが、購入者と見込む日本航空と全日空の反応は鈍い。 特に日航は先の増資で欧エアバスの輸入代理店である三井物産や米ボーイングの代理店である双日からそれぞれ二百億円、百五十億円の出資を仰いでいる。千五百億円の増資となっても「まだ財務的に余裕があるわけではない」(日航幹部)ことに加え、今後は増資の“見返り”を求める両商社が「MRJと競合するサイズのエアバスやボーイング機の購入を迫ってくるのは避けられず、MRJを優先的に取り扱うことは難しい」(同)。 全日空も「八十席前後のMRJを導入できる路線は少ない」(全日空幹部)と冷ややか。三菱重工は事業化には百機程度の受注が必要とみているが、「『五十機買ってくれ』といわれても無理な話」(同)とつれない。かといって中国やロシアも自国で小型機を生産しており「海外の航空会社に売るのも厳しい」(大手証券アナリスト)。 三菱重工は三月末に受注状況を踏まえて事業化の是非を決める。MRJの事業会社にトヨタ自動車の出資を仰ぎ「国策」プロジェクトを強調することで日航や全日空に購入を迫るが、簡単ではない。

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