台湾総統選を決した「天然独」の台頭

執筆者:野嶋剛2016年1月18日

 かつて日本の参院選で社会党(現・社民党)が大勝したときに「山が動いた」という土井たか子委員長(当時)の“名言”が語り草になったが、今回の台湾総統選・立法委員選挙の結果は、まさに「山が動いた」という表現がふさわしい。

 動いた山は、戦後半世紀以上にわたって台湾政治に君臨していた国民党主導の政治体制だった。民進党は過去にも総統を勝ち取ったことがあるが、2000年は国民党分裂による漁夫の利。2004年の総統選は、大接戦の末に銃撃事件が起きて超僅差での勝利。しかも、国会にあたる立法院で、民進党は1度も国民党の勢力を上回ったことがなく、政権担当の8年間は「ねじれ国会」で、やりたいことを国民党に掣肘(せいちゅう)されてばかりだった。

 それが今回、総統選においては、56%の得票率、300万票の大差によって、野党・民進党主席である蔡英文候補が勝利。立法委員選挙でも、定数113議席のうち、民進党は68議席を獲得して、圧倒的第1党に躍り出た。国民党は主席の朱立倫候補を立てたが、得票率は31%と惨敗。立法院でも、現有勢力だった64議席が半分近い35議席になった。

 これは、戦後の台湾において、1党専制時代から民主化の後も政治の主役として君臨した国民党という「山」が、根こそぎ動かされたということである。

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