東芝の巨額粉飾決算問題で、企業の決算書をチェックする会計監査制度が大きく揺らいでいる。企業経営者が不正を働いて監査法人を騙そうとすれば粉飾を見抜くのは困難だというのが、会計監査業界が繰り返してきた「言い訳」だが、それが東芝という日本を代表する企業で起きてしまっただけに、監査制度の根幹がグラついているのである。

 監査制度が揺らげば、日本企業ひいては日本の資本市場の信頼が揺らぐ。日本企業の決算書は信用できないので、危なくて日本株など買えない、ということになりかねないのだ。では、どうやって監査制度への信頼を回復するのか。

 

伝わらない危機感

 1月13日、日本公認会計士協会が主催する恒例の新年賀詞交歓会が東京の帝国ホテルで開かれた。例年は立錐の余地がないほど賑々しいパーティーだが、今年はめっきり人が少なく、華やいだ雰囲気に乏しかった。いつも大勢でやってくる金融庁など霞が関の官僚がほとんど顔を見せなかったことが大きい。すでに国会が始まっていることも一因だが、不祥事が起きている監督対象の業界のパーティーには出席しにくいという面も強かったのだろう。

「2016年に何をやるか。会計監査への信頼を回復させなければなりません」

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