この秋、国土交通省の外局として新設される観光庁。期待されるのは二〇一〇年までに日本を訪れる外国人観光客を一千万人に増やし、日本人と外国人が国内で観光に使う額を三十兆円に伸ばす政府目標の達成だ。少子高齢化で縮小する内需を補うためにも新設官庁の責任は重いが国交省はとにかく省内から初代長官を送り込み新たな縄張りを完全支配しようと画策中だ。 ところが、民間からは舩山龍二JTB会長を推す声も。JTBは大株主でもある鉄道会社や航空会社との関係が緊密で、「舩山氏は旅行業に携わる人脈に広く通じている」(JR東日本幹部)とされる。JTBが今春予定しているトップの交代人事で舩山氏が会長を退けばいっそう現実味を帯びる。慌てた国交省は「舩山氏は世間一般では認知度が低い」(国交省幹部)ことを理由に、冬柴国交相にあの手この手で因果を含めているが、ほかにも〇四年からスタートした観光立国推進戦略会議の座長、牛尾治朗ウシオ電機会長がそのまま初代長官に“居坐る”シナリオもあるとされ、気が気ではない。 国交省が送り込もうとしているのは、昨年七月に日本郵政公社から古巣に呼び戻され総合観光政策審議官に就いた本保芳明氏。異例の出戻り人事は「初代長官含み」(国交省幹部)とされる。だが、旧運輸省の国際畑を歩んできた人物とはいえ、役人が観光振興の旗をうまく振れるのか。領土拡大のための「武家の商法」などお断りだ。

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