起工式開催の過程で表面化したもう1つの問題が、インドネシア政府とKCIC社の間で締結される事業契約の内容をめぐるものであった。起工式後の1月29日に調印される予定だった事業契約は、両者の間で合意に到らない点が残されたため、いまだに締結されていない。

 両者の見解が対立している点は、(1)50年とされている事業契約の開始時点を契約調印時からとするか、運行開始時とするか(2)独占的営業権を与えるか(3)政府保証をするか、の3点である。

 第1の点については、KCIC社が運行開始時から50年の契約とすることを求めているのに対して、政府は契約の調印時からを主張している。事業契約の開始を調印時から50年とすると、無収入の工事期間が契約期間に含まれることになり、KCIC社にとっては大きな損失となる。一方、政府の意図は、工事が遅れていつまでも開業できないという事態を起こさせないところにある。中国にはマニラでの鉄道建設で工事遅延のすえ事業凍結に到った「前科」があるし、インドネシアもジャカルタで建設予定だったモノレール計画が工事の中断と再開を繰り返したあげく、10年あまり経って結局は中止になったという経験がある。政府は、予定どおりに高速鉄道の建設を終わらせることを目指しているのである。

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