パキスタン陸軍参謀長「任期延長拒否」の波紋

執筆者:緒方麻也2016年2月19日

 強烈なリーダーシップでイスラム過激派掃討作戦を推し進め、国民の人気を集めた上に諸外国からも信頼されていたパキスタンのラヒール・シャリフ陸軍参謀長(59)が1月下旬、大方の予想を裏切って任期延長を拒否し、予定通り今年11月29日の任期満了をもって退役する、と表明した。シャリフ参謀長は、対テロ作戦だけではなく欧米やロシア、中東諸国などを相次ぎ訪問して外交でも大きな成果を上げるなど、一軍人の枠を超えた存在感を放っていた。文民政権のナワーズ・シャリフ首相らは早くから参謀長「続投」の方針を示唆するなど、任期延長は既定路線とみられていただけに、その影響は小さくない。

 

大規模掃討作戦を指揮

 英領インドからの独立後69年の歴史のうち、半分近くにわたって軍事政権下にあったパキスタン。最近でも1999年にムシャラフ参謀長(当時、後の大統領)が無血クーデターで政権を奪取、その後任であるアシュファク・カヤニ参謀長は民政復帰後、通常3年の任期を延長し6年間にわたって軍トップの座にあった。

 シャリフ参謀長は父や兄(第3次印パ戦争で戦死)をはじめ親族から歴戦の英雄を輩出した軍人一族の生まれで、歩兵師団長や辺境部駐留軍司令官などを歴任。2002年には大統領を兼務していたムシャラフ参謀長の秘書官も務めた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。