世界のマネーが株式、商品から逃げ去り、国債へと雪崩を打っている。日本銀行が清水の舞台から飛び降りるつもりで「マイナス金利政策」に乗り出した日本も例外ではない。株安は世界同時不況の前触れ、といった解説が人口に膾炙する。いま起きている異変は、一体何のシグナルだというのか。

「株式市場は過去の5回の不況を9回言い当てた」。米経済学者のポール・サミュエルソンは、かつてこんな名言を残した。株式市場は景気の先行指標として、重要な役割を果たす。株価の下落は企業業績や景気の変調を先取りすることが多い。半面、株価が下げても、業績や景気は拡大し続けることも少なくない。その時は、株式市場の内部要因による空騒ぎだったことが判明する。

 年初来の市場の混乱は、そのどちらか。前者とすれば、2007~8年のパリバ・ショックからリーマン・ショックに至る国際金融市場の混乱が想起される。後者とすれば、1997~8年のアジア通貨危機からロシア経済危機に至る局面が思い出される。日本は両者の危機でマイナス成長に陥るなど、惨憺たる目に遭わされたが、欧米にとってアジア通貨危機は他人事だった。

 中国においては、人民元の固定相場をとっていたおかげで、アジア通貨危機はやり過ごせたし、リーマン後の世界経済危機の波及は4兆元(約57兆円)の景気対策で回避できたうえに、自らの経済力の飛躍台にすることもできた。今回の世界経済の変調と国際金融の混乱は、どうやらその中国の成長モデルに狂いが生じたことに由来する。それは分かるが、どのような処方箋が用意できるのか。

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