トルコの名所、イスタンブルのバザールの絨毯屋商法を彷彿とさせる交渉術が、対EUの外交の場で旺盛に発揮され、EU首脳は振り回されている。

 3月7日にブリュッセルで行われたEUトルコ首脳会談で、トルコの協力を得たEUの難民対処策が合意される見通しだったが、直前にトルコが出してきた、難民対処へのEUの拠出金倍増の要求を受け、協議は10日程度の延期を迫られた。

 難民・移民問題はEUと加盟各国の最大の政治課題となっているが、うまくいくかいかないか分からない(多分うまくいかない)対処策についてさえも、常にトルコの協力が不可欠である。昨年11月にドイツのメルケル首相が主導して提示した、トルコに30億ユーロの経済支援を与える見返りに難民抱え込みを頼むという案をベースにして対処策が策定されてきたが、シリアから流出する難民の状況のさらなる悪化と、それに対処するEU諸国にとっての難民問題の政治的・経済的コストの増大を見透かして、トルコは追加でさらに30億ユーロを要求してきた。締結間際になっての2倍の条件釣り上げには、EU側は驚きを表明し、表向きは難色を示して、来週に予定されるEU首脳会談に結論を持ち越しているが、ギリシアのようなEU内の対難民「最前線」の国に対処能力が十分でない以上、当面はトルコに頼る以外に手段はなく、トルコが出してきた新条件を呑む以外に選択肢はないと思われる。

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