国債市場が崩壊している。

 黒田東彦・日本銀行総裁による“異次元緩和”の究極政策「マイナス金利」導入により、新発国債の入札において、入札利回りがマイナス金利に突入するなど、国債市場は本来持っている機能を失い始めた。

 

銀行「モラルハザード」の温床

 3月1日、10年利付国債(342回債)の入札が行われた。この国債の表面利率は年0.1%だが、入札結果は入札最高利回りが-0.015%、入札平均利回りが-0.024%となり、10年国債入札で初めてのマイナス金利入札となった。これは、100円で発行される10年国債を平均で101円25銭、最低で101円16銭で買い入れたことになる。

 この342回債は、その後10年国債の指標銘柄となっており、3月8日には指標利回りとしても初めて、日銀がマイナス金利政策で銀行の超過準備預金に付与することを打ち出した-0.1%と同水準まで低下した(2016年2月4日「日銀『マイナス金利』導入の『本当の理由』」参照)。

 こうした背景には、2014年10月31日に日銀が打ち出した異次元緩和の追加緩和(通称「黒田バズーカ第2弾」)により、日銀の国債買い入れ枠を年約30兆円増額し、マネタリーベース(資金供給量)を年約80兆円まで拡大する政策が影響している。日銀は毎月、長期国債を市場から8~12兆円買い入れており、その平均残存期間も7~10年程度となっている。現在、政府が発行する長期国債は毎月10兆円程度。つまり、毎月発行される国債のほとんどは、いったんは銀行などが入札するものの、結果的にそのほとんどを日銀が買い入れていることになる。

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