シリア北部のクルド人勢力が、シリアの連邦化と、クルド地域の自治を近く宣言する見込みである。ここで鍵となるのは、背後でどの程度米露の同意を取り付けているかである。また、クルド人勢力の処遇をめぐって米露でどの程度の合意・協調がなされているのか。

 シリア北部のクルド人勢力を主導するPYDとその軍事部門YPGは、対「イスラーム国」の現地同盟勢力として米国から支援を受けてきた。

ロシアにシリア・クルド自治政府の「大使館」開設

 しかし同時にPYDはロシアにも接近していた。2月10日、モスクワで、PYDが主導して設立を表明しているRojavaと呼ばれるシリア北部のクルド人主体の事実上の自治行政体の「代表部」の開設が祝われた代表部開設はプーチン大統領本人の招待による開設と謳われた。公式にではないが、事実上の「大使館」である。

 これは直接的には、ロシアが対立を深めるトルコに「嫌がらせ」をしたと受け止められたが、より長期的に持続した場合は、ロシアがクルド人勢力の抱き込みを図り、先陣を切ってシリア北部クルド自治区を「承認」した瞬間であったということになる。もちろん、ロシアは、情勢が変われば非情に切り捨てる可能性も大いにある。クルド人の独立運動は、オスマン帝国崩壊期にイギリスに支援されたトルコ・アナトリア半島での運動も、イラクに支援されたイランでの運動も、域内・域外大国の思惑と国際関係のバランスに左右され、切り捨てられてきた。今回もやがてそのような運命を辿らないとも限らない。

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