共産党政権による圧政を逃れて海外に脱出したチベット人を「逃亡藏人」と呼び、彼らをも華僑華人と見做し、これまでの「重漢軽少(漢族を重視し少数民族を軽視する)」から「漢少并重(漢族と少数民族を同様に重視する)」へと、華僑華人研究の大転換を打ち出す書である『華僑華人与西南辺疆社会穏定』(石維有/張堅著 社会科学文献出版社 2015年9月)が出版される2カ月前の2015年7月、『華僑華人在中国軟実力建設中的作用研究  RESERCH ON EFFECTS OF OVERSEAS CHINESE IN CHINESE SOFT POWER BUILDING』(謝婷婷/駱克任等著 経済科学出版社)が出版されていた(前書については2016年1月10日「【ブックハンティング】チベット問題を『国内問題』に矮小化する習近平の『新方針』」を参照)。

 
 
『華僑華人在中国軟実力建設中的作用研究』

 表紙に「教育部哲学社会科学研究重大課題攻関項目」と記し、冒頭の「前言」で教育部が定めた「2010年重点研究委託項目」の一環としての「華僑華人在中国軟実力建設中的作用研究」だと謳っているところから、本書は教育部からの研究資金を受託して進められた中国の世界戦略構築に、華僑華人がソフトパワー面で果たす役割を研究した成果、つまり教育部主宰国家プロジェクトと考えて間違いないだろう。

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