七番目の「旧ユーゴ国家」コソボの道険し

執筆者:八谷敏弘2008年4月号

[プリシュティナ発]「コソボ議会は満場一致で独立宣言を可決する」。セルビア・コソボ自治州の州都プリシュティナ。中心部にある州議会で二月十七日、クラスニチ議長が高らかに宣言すると、議場は総立ちの議員らの拍手に包まれた。「歴史的な日だ」「この日を待っていた」。コソボの人口約二百万人の九割を占めるアルバニア系住民は喜びを爆発させた。プリシュティナの街には爆竹が鳴り響き、お祭りムードは三日三晩続いた。アルバニア系住民のシンボルとして、隣国アルバニアの双頭の鷲の国旗がいたるところで翻った。 米国や欧州連合(EU)は一部の国を除いて次々と独立を承認。「欧州の裏庭」(ミリバンド英外相)として、旧ユーゴスラビア地域の安定を重要視するEUは、アハティサーリ国連事務総長特使の勧告した「国際社会監督下での独立」で主要な役割を担い、独立の既成事実化を狙う。 アハティサーリ案に基づき、EUコソボ特別代表にオランダの外交官、ピーター・フェイツ氏が就任。米国やEU主要国などで「コソボ国際運営グループ」を結成、フェイツ氏を国際文民代表に任命した。 EU特別代表を兼務する国際文民代表は、約三百人の国際文民代表事務所と、約千九百人の警察官、さらに判事など法律専門家からなるEU文民支援隊を従える。行政には直接関与しないが、官僚罷免権や法案拒否権などの強い権限を持つ。

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