黒田東彦・日本銀行総裁が導入した「マイナス金利政策」は、市場に与えたインパクトの大きさに反して、実態面では“不発”に終ったことが明らかになった。3月16日に日銀が発表した2月の「業態別の日銀当座預金残高」を見ると、マイナス金利導入は銀行の行動にほとんど影響を与えていないことがわかる。もちろん、1カ月だけの実績でマイナス金利政策が失敗だなどと言うつもりはない。しかし、黒田総裁の思惑通りにはならなかったのは確かだろう(「日銀当座預金」「準備預金」についてはこちらの記事を参照=2016年2月4日「日銀『マイナス金利』導入の『本当の理由』」)。

 

「裁定取引」も働かず

 まずは、マイナス金利が導入されて初めての準備預金積み期間となった2月の業態別当座預金平均残高の状況をご覧いただこう。

 

※非準備預金制度適用先の額を除外してあるため、各行の金額を足しても合計額は一致していません。

 

 2月のマイナス金利適用となった残高は23兆840億円だった。これは、マイナス金利導入前の1月の試算値23兆1940億円と比較して、わずかに1100億円(0.48%)しか減少しておらず、ほぼ横ばいと言ってもよいだろう。つまり、マイナス金利の適用を回避して預金が減少し、これが流動性資金として市場に出ていくという日銀の“目論見”は見事に外れたわけだ。

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