ブリュッセル・テロが突き付けたもの

執筆者:大野ゆり子2016年3月25日

 ブリュッセルに自宅があるのだが、ちょうど今週、滞在先のバルセロナからフライトで一時帰宅しようと考えていた。3月22日の朝のフライトにしなかったのは、たまたまその日の夜に予定が入ったからである。

 それだけに、テレビをつけた途端に目に飛び込んできた、爆風ではがれ落ちた天井材や窓ガラスが散乱しているブリュッセル空港の映像には言葉を失った。思わず電話をとって、友人ひとりひとりの安否を確認し、また世界中から安否を気遣って連絡をくれた友人に返事をして半日が過ぎた。携帯電話の番号はつながりにくくなっており、ベルギーにいる日本人には、2011年3月11日に日本に連絡をとったときと同じような不安が、心に蘇ってきた。

 

 ブリュッセルに拠点を置いて14年になるが、夫は自宅にピアノと指揮者用総スコアを置き、ここからほぼ月に2回、多いときは毎週客演指揮に出かけているので、この出発ロビーの利用回数は数えきれない。空港のガラス張りのドアを入ってから、左に曲がって、スターバックスのスタンドを通り過ぎ、その右にあるルフトハンザのカウンターに行く――目をつぶっても行けるぐらい、おそらく100回以上は通っている、使い慣れた出発ロビーだ。

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