台湾で、先週末、現在の与党である国民党の党主席を選ぶ党内選挙が行われ、洪秀柱・元党副主席が圧勝した。先の総統選・立法委員選のダブル選挙で惨敗を喫し、政権を民進党に明け渡す日が5月に迫るなかで、敗戦の責任を取って辞任する朱立倫主席の後任として、再起が危ぶまれるほどの敗北を喫したなかでの再建を、初の女性党首となる洪秀柱氏に託すことになった。しかし、正直なところ、国民党にとって正しい選択だったと言えるのか留保せざるを得ない。

 洪秀柱氏は当初、総統選の候補であった。しかし、「終極統一」(最終的な中国と台湾の統一)など過度に中国寄りと受け止められる発言を繰り返した結果、選挙情勢が低迷し、投票3カ月前になって、朱立倫氏にすげ替えられた、という経緯をたどった。要するに、ほんの半年ほど前、台湾の有権者からダメ出しをされた人物に党の再建を任すのである。このことに、現在の国民党が直面する苦境とジレンマが表れている。

 

趨勢を決した「黄復興党部」の存在

 国民党には、大陸から渡ってきたいわゆる外省系(馬英九総統など)と、台湾出身者の本省系=本土派(王金平・前立法院長など)の2大勢力が存在している。この2つが明確に派閥を形成しているかと言えばそうではない。ただ、その中国への態度は、どちらも「和解」を求めてはいても、外省系は「同じ中国(あるいは中国人)」という志向のもとでの和解であり、本土派は「台湾は台湾」という志向での和解を、それぞれが考えているという違いがある。民進党は「台湾は台湾」を根本原理としているので内部の分裂はないが、この2つのグループの存在がウイングの広さとなることが国民党の強みでもあった。

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