日本企業「ロシア進出」を待ち受ける陥穽

執筆者:稲熊均2008年4月号

生産が開始されたトヨタ・カムリは「ロシアの誇り」と喧伝され、日本ブランドへの信頼は抜群。だが、進出企業には思わぬ難題が……。[モスクワ発]ロシアではいま、「続・運命の皮肉」という映画が大ヒットしている。旧ソ連時代に製作されたラブコメディを三十二年ぶりにリメークした作品で、昨年末の封切りからこの三月までにロシアの映画史上最高となる五千三百五十万ドル(約五十六億円)の配収を記録した。 プーチン大統領が重要な場面で登場し、クライマックスで流れる曲の詩を大統領府のスピーチライターが書いていることから「国策映画」とも評されるが、大統領と並ぶ“陰の主役”はトヨタ・カムリだ。 映画の冒頭から、走行シーンがスクリーンいっぱいに映し出され、ハイライトシーンでは、主人公カップルの「運命」を決する重要な役割を担っている。カムリのCM映像を観せられているのではないかと錯覚するほどの活躍ぶりだ。 実はこの映画が封切られた昨年十二月二十一日は、日本の自動車メーカーとしては初のロシア進出となったトヨタのサンクトペテルブルク工場で稼働式典が開かれ、カムリ第一号車が出荷された日でもあった。 式典にはプーチン大統領も駆けつけている。二〇〇五年の着工式に続く国家元首の出席で、テレビ各局はトップニュースで取り上げた。この日から、カムリのテレビCMも流されるようになったが、キャッチコピーはなんと「ロシアのカムリ 私たちの誇り」だ。

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