[ローマ発]イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ前首相(七一)の威勢がいい。政敵ロマーノ・プロディ首相(六八)率いる中道左派政権の崩壊後、「プロディは失敗した。イタリア国民はもはや左派を信用しない」と繰り返し、自信満々だ。 それもそのはず、ベルルスコーニ氏率いる中道右派勢力「自由国民」は最新の世論調査で支持率四五%前後を確保、中道左派に一〇ポイント近く水をあけている。四月十三、十四日に投票されるイタリア総選挙で勝利し、三度目の首相の座に就くことが視野に入っているのだ。 ベルルスコーニ氏は民放大手「メディアセット」やサッカーチーム「ACミラン」を所有し、イタリア一の富豪とも称される。二〇〇六年の総選挙では「政治を私物化した」と批判され、プロディ氏率いる中道左派連合に惜敗、政権を明け渡した。高齢や不整脈のため数年先の政界引退も予想されていた。だが、ライバルの早い失脚で息を吹き返し、最近は「私はスーパーマンではない。孫たちはそう信じているけどね」と得意のジョークも滑らかになっている。 汚職・腐敗疑惑が絶えなかったベルルスコーニ前首相からの「変化」を掲げたプロディ首相だったが、政権崩壊はいともあっけなかった。連立内閣を組む九党のうちたった一つの小政党の離脱がもとで、一月二十四日夜、上院での内閣信任投票は否決された。主義主張が異なる総勢九党の連立は、発足当初から「ベルルスコーニを選挙で倒すことだけが共通目的で、結束はもろい」と評されており、それが現実となった形だ。

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