香港珠海マカオ大橋の前途はまだ多難?

執筆者:八ツ井琢磨2008年4月号

 香港、中国広東省、マカオの当局は二月末、三地を結ぶ「香港珠海マカオ大橋」の建設資金拠出方式について合意。民間主体のBOT(建設・運営・譲渡)方式を採用するが、不足する資金は三当局が共同で拠出する。分担比率は香港五〇・二%、中国本土三五・一%、マカオ一四・七%とした。懸案だった資金問題が解決し、「大橋」構想は実現に向けて大きく前進した。「大橋」は主要区間で長さ約三十キロ。橋梁と海底トンネルを二カ所の人工島で接続し、自動車専用の高速道路を敷く計画だ。完成後は香港―マカオ間の所要時間が三十分程度に縮まる。 香港と広東省の珠海を結ぶ橋梁の建設構想は、香港の財閥ホープウェル・ホールディングスの胡応湘(ゴードン・ウー)会長が一九八三年に提唱。その後、二〇〇二年に朱鎔基首相(当時)が建設を支持するなど構想は一気に具体化する。香港返還十周年にあたる〇七年の開通も可能と、楽観視もされていた。 だが、当局や企業間の利害関係が複雑に絡み合い、計画の実現は一筋縄ではいかなかった。 たとえば設計方式。香港を起点に珠海、マカオを「Y」型に結ぶ設計に対して、香港に隣接する深セン市が反対。深センを含む四地をつなぐ方式を求め、決定が遅れた。出入境管理施設を三地それぞれに置くか、人工島に一カ所にまとめるかなど、当局間の調整は難航。一時は鉄道併設案さえも提起されていた。

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