「外国人労働力」受け入れ議論の「現在地」

執筆者:原英史2016年5月16日

 今年3月から自民党「労働力確保に関する特命委員会」で、外国人受け入れに向けた議論がスタートした。稲田朋美政調会長は委員会立上げに際し、「外国人材の活用について、正面から取り組んで議論する」と発言、近くとりまとめを行う見通しだ。
 また、政府が5月に発表する成長戦略では、永住権緩和の方針などが打ち出される見通しと報じられている。外国人受け入れ拡大の議論が本格的に動きつつある。

優秀な人材を確保することが必要

 背景としてしばしば指摘されるのが、人口減少社会の到来だ。2014年の経済財政諮問会議の委員会で、仮に出生率が回復したとしても「人口規模を長期的に維持するには、年間20万人の移民受け入れが必要」との試算が示されたことも記憶に新しい。(図表1:リンク先の2ページ目)

図表1

 

 

 

 しかし、人口規模を維持するための外国人受け入れ、という議論はあまりに短絡的だ。1人当たりGDP(国内総生産)成長率と人口規模は一般には相関関係がないとされ、人口が減少したからといって国が貧しくなるわけではない。一方では「人工知能の急速な発達で、人間の仕事がなくなっていく」との心配もある。逆に見れば人口減少はむしろ、無用な摩擦なく、最先端の技術を導入して生産性を向上するチャンスとも考えられるだろう。
 外国人をもっと受け入れるべき理由は、むしろ、優れた人材を受け入れ、経済・産業の競争力を高めるためだ。主要国はすでに、そうした人材獲得競争に入っている。だがその中で、日本の外国人受け入れは突出して少なく、しかも、2000年以降の推移をみてもほぼ横ばいである。かつては日本より閉鎖的だった韓国にも一気に追い抜かれた状況だ。(図表2)これは、日本の将来を貧しくすることにつながりかねない。

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