国の「原発無策」が塞ぐ「東芝」再生の道筋

執筆者:磯山友幸2016年5月19日

 巨額の粉飾決算の末、事実上の“解体”に追い込まれている東芝が5月12日、2016年3月期の連結決算を発表した。営業損益は7191億円の赤字、最終損益でも4832億円の赤字となったが、これはあくまで今後存続する「継続事業」の決算数字。売却したヘルスケア事業や株式譲渡契約を結んだ家電部門の損益は含まれていない。また、将来戻ってくると見込んでいた税金資産の取り崩しによる損失や、売却した東芝メディカルシステムズの売却益、投資資産の評価損計上などもあり、実態が見えにくい決算になっている。

 

断末魔のやり繰り

 日本の事業会社での過去最大の赤字は、2009年3月期に日立製作所が計上した7873億円の最終赤字。東芝は一見、そこまでの赤字ではなかったように見えるが、実際に処理を迫られた損失額は日立以上の規模で、事実上、日本の事業会社として過去最大級の赤字決算だったと見ていい。3月末の連結純資産(資本)は6569億円で、1年前の1兆5653億円に比べて9084億円減少している。東芝メディカルの売却益がなければ純資産がマイナスとなり、債務超過に陥っていたであろうことが容易に想像される。実際、東芝単独の決算では963億円の資本欠損に転落、今後、減資などを行う方針だ。つまり、断末魔で何とかやり繰りした末の決算だったと言えるのだ。

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