基礎年金の財源を税金にしては――そんな議論が活発になってきた。制度の改革は必須だが、それにかこつけた本末転倒の増税はごめんだ。 一月二十九日、首相官邸で開かれた政府の「社会保障国民会議」の初会合。冒頭、あいさつに立った福田康夫首相は基礎年金(国民年金)の財源問題に触れながら、「税方式へ転換したらどうか、といった議論もある」と述べ、伝え聞いた厚生労働省幹部の表情をこわばらせた。 二〇〇九年度、基礎年金の給付見込み額は十九・四兆円。財源の内訳は十二兆円(六二%)が保険料で、七・四兆円(三八%)が税金だ。日本の公的年金は、保険料財源を中心とする社会保険方式。二十歳以上―六十歳未満の全国民が加入する(タテマエの)基礎年金がベースで、自営業者やフリーター、無職の人らは基礎年金だけに入る。民間企業の会社員は厚生年金、公務員や私立学校教職員は共済年金に加入し、定額の基礎年金に加えて現役時代の収入に応じた報酬比例年金も受け取るが、税方式化の議論が起きているのは、基礎年金に関してだ。「税方式への転換」とは、保険料による十二兆円の給付財源をすべて税に置き換えることを意味する。消費税なら五%程度のアップを要するが、税方式導入論に対し厚労省や厚生族議員は、「保険料と違って財源を自らコントロールすることができなくなる」「税財源をすべて年金に取られ、医療や介護に回せなくなる」と強く警戒している。

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