5月25日付の日本経済新聞は、1面トップでインドネシアのジョコ・ウィドド大統領との会見記事を掲載し、インフラ建設に関し従来の方針を改め、日本企業にも比重を置く旨の発言を伝えている。インフラ輸出の象徴でもある新幹線建設をめぐって、インドネシアを舞台に展開された昨年来の日中両国の動きを振り返ってみると、インドネシア政権の関心が中国から日本へ移ったとも考えられる。だが、だからといって東南アジアで日本が優位に立ったと思い込むのは早計というものだろう。

 それというのも、東南アジアにおける新幹線建設の大本命は、やはり中国が「泛亜鉄路」と呼ぶ東南アジア大陸部を南北に貫く路線であり、わけても、その中心は昆明を起点にラオス(ヴィエンチャン)、タイ(バンコク)、マレーシア(クアラルンプール)の3カ国の首都を経てシンガポールに繋がる「泛亜鉄路中線」だからだ。

 

タイの最優先課題

 泛亜鉄路中線については既に何回か取り上げているが(2016年4月4日「高速鉄道建設:『中国の提案』を拒否した『タイの深謀』」ほかを参照)、タイと中国の間の丁々発止の駆け引きは、目下のところ小休止といったところだ。タイ側に目立った動きが見られない。それもそうだろう。将来の国づくりを構想した時、避けては通ることのできない大難関である王位継承問題に、国を挙げて取り組まなければならない事態に立ち至っているからだ。これこそが現在のタイが抱える国政上の最優先課題であるに違いない。

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