バラク・オバマの酔わせる演説

執筆者:名越健郎2008年4月号

 米大統領選の民主党予備選で破竹の勢いとなったオバマ上院議員の演説は、酒に酔ったような感覚を聴衆に与えるという。「白人のアメリカも、黒人のアメリカもない。アメリカ合衆国があるだけだ」「われわれはこの国を変えることができる」と訴えると、聴衆から“Yes, we can!(やればできる)”の大合唱。聞く人を陶酔させる麻薬のような演説能力は、米グラミー賞最優秀朗読アルバム賞を受賞したことでも立証された。 当初マイナスに働くとみられた「バラク・フセイン・オバマ」というフルネームも、自らジョークの対象にする余裕を見せる。若者や高学歴者の圧倒的支持を受けており、このまま最後まで行きそうな勢いだ。 エドワード・ケネディ上院議員らケネディ家の面々がオバマ候補を支持し、壇上で祝福した。 このシーンをテレビで見た高齢の白人男性が言った。「あれがケネディ家の新しいバーテンダーか」 民主党予備選で、若い男女が「ヒラリーかオバマか」で迷っていた。「ヒラリーに投票したら、人種差別主義者とみられてしまうわ」「オバマに投票しても、女性差別主義者とみられてしまう」 これを聞いていた年配の民主党員が言った。「エドワーズ候補にしたまえ。彼ならマイノリティー(少数派)だから、誰からも文句は出ない」

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