英国「EU離脱」の深層とそれに続く「予備軍」

執筆者:田中直毅2016年6月21日

 伊勢志摩サミットを終えたメルケル独首相とオランド仏大統領の2人の心底を推し測ってみよう。
 ユーロ圏からのギリシア離脱(グレグジット)問題の顕在化からすでに6年がたつ。この間ドイツはギリシアに財政規律を促すために、ECB(欧州中央銀行)とIMF(国際通貨基金)という2つの国際機関を使って、ドイツという国家ができるだけ前面に立つことを回避しながら、ギリシア国民に財政面からの緊縮を要求してきた。しかしどうやらもう1度原点に戻らなければならない時点に来たようだ。3つの問題が同時に到来したからだ。 

ギリシア問題で対応に限界

 ひとつはECBの個別関与能力に限度が来たことだ。ECBによるマイナス金利導入から2年近くがたつなか、ユーロ圏の経済回復の筋書きがかけない。このためECB総裁のマリオ・ドラギの評価が急落している。このことは、ECBによるギリシア問題へのこれ以上の独自対応が難しいことを示している。
 第2はIMFによる緊急融資も返済期限が近づくとともに、被援助国への注文を具体化せざるをえなくなってきたことだ。他方では、ギリシアの財政再建のプログラムの実行性にはもともと問題があったことをIMFの調査レポートも認めざるをえなくなった。緊縮財政にギリシア国民が耐えられなくなっている政情が明らかになってきたからだ。
 第3はギリシアの政治構造の不安定性ゆえに、ガバナビリティ(統治)の視点から、ギリシア政府の取り扱いが難しくなったことだ。シリア難民がギリシアに結果としてプールされるように押しかけるなか、どのようにギリシア政府と間合いを取るか、という問題が深刻化している。

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