1年前に統合計画を発表した際は笑顔だったが……(出光興産の月岡隆社長=右=と昭和シェル石油の亀岡剛社長)(C)時事

 

 出光興産と昭和シェル石油の経営統合計画が、出光創業家の反対で頓挫する可能性が出ている。創業家の“反乱”には思惑と打算もあり、与する考えはまったくないが、今回の件は日本でも急増する「経営統合」をより慎重に考える必要性を示しているのも事実だ。即効性の合理化効果のみを求める経営統合に潜む落とし穴に注意するべきである。企業の理念、文化の違いや、なにより社員、取引先の心情を軽視した「木に竹」どころか「鳥と魚」を接ぐような経営統合は、長期的にみればうまくいくはずがないからだ。

 

「人間尊重」という理念

 出光興産は1911年に門司(現北九州市)で石油販売業として創業、新しい商売、市場に挑戦することで急成長した。創業4年目には中国大陸に進出、満州から華北、華南と営業エリアを広げていった。既存の石油会社が支配する国内市場ではなく、しがらみのない中国で強さを発揮した点に、今にもつながる出光興産のアグレッシブさが表れている。だが、終戦とともに中国にあったすべての資産、商売を失った。

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