本人が果たして何を「政治的に、かつ道義的に正しい」と考えているのか判然としないことが問題(C)AFP=時事

 

 これだけの政治的混乱を引き起こしている「トランプ現象」を「バカげたもの」と放っておく訳にはいかない。英高級紙『ガーディアン』は8月半ば、本格的に思想史から考える研究者による長文論考『トランプによる右翼反乱の暗い歴史』を掲載した。それだけではない。米最高学府とされるハーバード大学の政治学大学院ケネディースクールからも著名な学者による『トランプ、Brexit、ポピュリズムの興隆』と題された調査報告書が出された。学術研究も本格化する兆候がある。

 ハーバード大調査報告は政治意識論で著名なミシガン大教授ロナルド・イングルハートとハーバード大の研究者によるものだ。副題は「経済的弱者と文化的反動」。トランプ現象と英国の欧州連合(EU)脱退について、経済グローバル化で脱工業化を遂げた先進国社会で(1)労働者階級が直面する経済的困窮(2)同社会で発展した進歩的価値観に対する大衆の反発――という2つの側面からポピュリズム発生の原因を探っている。(2)の「文化的反動(cultural backlash)」が主たる原因というのが結論だ。【Trump, Brexit, and the Rise of Populism: Economic Have-Nots and   Cultural Backlash, HARVARD Kennedy School, Aug. 2016

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