誰が(主体)、どこに(投資先)、どのような仕組みで(統治のあり方)の三要因はカネの世界で決定的である。カネなんぞは古今東西、強欲の象徴で、あらためて分析など必要なし、と澄まし顔をしたいが、そうもいかない。われわれの社会を映し出す柄模様だからである。 二つのニュースがある。ひとつは日本の外貨準備高(外準)が二〇〇七年度末に一兆ドルを突破したこと。もうひとつは二月末で一兆六千五百億ドルの外準を保有する中国の国家外貨管理局がフランスの石油会社トタルの株式の一・六%を二十八億ドルで取得したことだ。ドルの下落のなかで、中国と日本という外準の世界一位と二位が何やら動くとの印象を世界中に植えつけたのだ。 なぜ外準が中国と日本で巨額となったか。たとえばEU(欧州連合)各国では外準はまったくといってよいほど意味のないものだ。共通通貨ユーロは変動相場制のもとで日々価格が決定される。昨今のように金融市場に対してドルの流動性供給が必要な折には、ECB(欧州中銀)とFRB(米連邦準備銀行)のスワップ協定で米国からドルを借りて市中に供給すればすむ。米国の場合はグリーンバックのドル紙幣が世界中で使用されるので、そもそも外準という概念さえ乏しい。欧米ともにこの統計に意味はない。

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