キトラ古墳の石室内の天井に描かれていた天文図[文化庁提供](C)時事

 9月24日、奈良県明日香村に「キトラ古墳壁画体験館 四神の館(しじんのやかた)」がオープンする。「四神」とは東西南北を表す4つの神獣(青龍、白虎、朱雀、玄武)のことで、キトラ古墳の石室にはそれぞれの方向の壁にこれらの絵が描かれている。そして、このうち修理を終えた極彩色の白虎と朱雀、そして金箔と朱を使い天井に描かれていた天文図の3面が展示されるのだ。この中で注目すべきは、天文図だ。現存世界最古で、石室の天井に描くのは、日本だけの発想だ。そして、星座の配置を調べれば、どこから天文図の知識がもたらされたか、その流れがわかるはずだ。
 天文図の28宿の星座(宿は星座の数え方)が4つの円に囲まれている。その円の中の3つは同心円で、ひとつだけ、中心がずれている。
 これらの円には、しっかりとした意味が隠されている。まず、小さなものから順番に説明していこう。
「内規」……北極星に近く、1年を通して地平線に沈まない星座。人間界で言えば、皇帝の住む宮にあたる。「赤道」……北極星の近くの天の北極から90度下ろした位置を示す。「外規」……観測できる範囲の星座で、観測地点によって異なってくる。そして残った中心がずれている円は「黄道」で、これが太陽の1年の軌道を描いたものなのだ。
 この天文図、日本で独自に作られたわけではない。高句麗の平壌付近か中国の長安(現在の西安)で観測されたデータが元になっていると考えられている。

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