与党を支える「大教団」が抱えるいくつかの問題

執筆者:フォーサイト編集部2016年9月15日

 公明党は自民党と共に、現政権の連立与党の一角である。民主党が政権を担った3年ほどの間、政権の座から離れたが、与党経験は長い。
 与党であるということは、我が国の針路に、絶大なる影響力を持つということである。よって、自民党同様、公明党の動向を追い掛けることは、我が国の針路を占う上で非常に重要なことだ。
 ただし、公明党の場合、党だけを見ていても、その本質はよくわからない。なぜならば、公明党はある組織からの大きな影響を受けているからだ。この組織とは、宗教法人の創価学会である。公明党の国会議員の中で、この大教団の票の力を借りずに当選した者は、1人もいない。
 だが、我が国与党に重大な影響を及ぼす組織・創価学会についての我が国メディアの報道は極めて少ない。そこで、我が国の政治をより深く理解するためにも、フォーサイト編集部は創価学会の動きを定点観測し、それを読者の皆様にお届けすることにする。第1回は、創価学会の現在のありよう、いくつかの問題点を分析する(連載タイトルの中の「信濃町」は、創価学会の多くの組織が存在する地名から取った)。

「参院選勝利」も勢力は頭打ち

 今夏の参院選で、公明党は改選9議席を5議席上回る14議席を獲得。7名の候補を立てた選挙区でも全員が当選したことから、創価学会執行部は「大勝利!」「完勝!」と欣喜雀躍し、投開票翌日の7月11日付『聖教新聞』(創価学会の機関紙)には、「異体同心の勝利、万歳!」との池田大作名誉会長のメッセージが紙面を飾った。
 もっとも、選挙結果を仔細に検証・分析すると、公明党の勝利は薄氷であったことが分かる。
 今回の参院選で公明党は、選挙区で7議席と前回比3議席増を果たしたが、公明党が選挙区で議席数を上積みできた最大の要因は、1票の格差是正によって、かつて公明党が候補を擁立していた愛知(9年ぶり)、兵庫、福岡(24年ぶり)の各選挙区に候補を立てることができるというチャンスに恵まれたこと。そして6月28日付『毎日新聞』が、野党統一候補の立つ1人区で自民党候補を支援する見返りとして、福岡選挙区の公明党新人候補に票を回してくれるように公明党が自民党に要請したと報じたように、自民党との選挙協力が低投票率のもとで奏功したものと見ることが可能だ。
 一方、創価学会が「広宣流布のバロメーター」(秋谷栄之助前会長の発言)とする比例区の得票数を見ると、勢力は頭打ちであることが顕著となる。今回の参院選比例区の公明党の得票数は757万票だが、これは前回、平成25年参院選の756万票とほぼ同数。今回の参院選からは18歳選挙権が導入されており、公明党には創価学会青年部に所属する全国の18、19歳の学会員票が入ると見られていただけに、得票の伸びは予想外に低い。
 過去の国政選挙における公明党の比例区最高得票数は、「小泉郵政選挙」といわれた平成17年衆院選における898万票。参院選では平成16年の862万票が最高であり、以後、減少傾向に歯止めがかかっていない。

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