国連「制裁決議」は北朝鮮に効くのか?

執筆者:鈴木一人2016年9月16日

 北朝鮮の5回目の核実験を受けて、にわかに国連安保理制裁の強化が議論されている。1月の4回目の核実験の後、新たな制裁決議である安保理決議2270号を採択するまで2カ月以上かかったが、今回は、既に中国が新たな決議に賛意を示しているとの報道もあり、かなり早い時期に新たな制裁決議が採択されることが見込まれている 。
 中国は韓国に配備されるTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)に対して神経質になっており、新たな制裁決議と引き換えにTHAADの撤去を求めるという観測もあったが、どうやら制裁決議とTHAADの問題は切り離して対応するということになりそうだ。

新たな制裁決議の方向性

 2016年3月に採択された安保理決議2270号はこれまででもっとも厳しい制裁決議と言われており、これ以上の制裁を常任理事国、とりわけ中国が合意するのは難しいのではないかと見られていた。しかし、新たな制裁決議に中国が賛意を示したということは、3月の時点よりも踏み込んだ制裁の可能性を示唆している。では、どのような制裁決議になるのであろうか。
 まず、これまで安保理決議2270号の「抜け穴」と見られていた「もっぱら民生目的で核・ミサイル開発の資金調達と関連していない」石炭や鉄鉱石などの輸出を制限することが考えられる。中国は安保理決議を履行する姿勢は見せているが、現実にはこうした「抜け穴」を通じて取引が活発に行われていると報じられている
 こうした「抜け穴」をふさぐこと、つまり例外事項を設けず、「あらゆる」石炭や鉄鉱石の取引を禁じるということで、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を絞るのは1つの方法であろう。しかし、これだけでは既に核開発の完成度を高め、ミサイルも連続して発射に成功している状況を変えることは難しい。
 また、核・ミサイル開発に関連する企業や軍の高官など、まだ制裁指定を受けていない個人や企業を追加で制裁指定することも考えられる。
 さらに金融制裁の強化も考えられるが、その効果も限られている。既に今年の1月に書いたように 、北朝鮮は資金の流れを複雑化させ、金融制裁を受けにくい体質となっている。金正恩体制は核開発と経済発展を同時に行う「並進路線」を取っており、対外的な金融決済が制限されることは、一定の制裁効果を期待できるが、アメリカが金融制裁を強化しても、核・ミサイル開発には変化がないどころか、さらに加速している。

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