北朝鮮が核実験を行った時、朴槿恵(パク・クネ)大統領はラオス訪問中であった。予定を少し早めて帰国した朴大統領は9月9日夜、青瓦台で開いた安保状況点検会議で「権力維持のために国際社会と周辺国のいかなる話も聞かない金正恩(キム・ジョンウン)の精神状態は統制不能とみなければいけない」と非難した。朴大統領の怒りは分かるが、国家元首の発言としては少し疑問を感じる発言だった。金正恩党委員長の精神状態が「統制不能」と言ってしまうことは、韓国をはじめ国際社会は対応のしようがないと認めるようなものだからだ。最近の朴大統領の発言は、北朝鮮の状況を正確に指摘すると言うよりは、自らの願望や怒りを生の形ではき出しているようで危なっかしい。さらに、政権幹部が大統領に歩調を合わせ過激な発言を繰り返している。

金正恩党委員長排除の特殊部隊

 韓国の任浩永(イム・ホヨン)合同参謀本部戦略企画本部長は9日「北韓(北朝鮮)が核兵器で危害を加える場合、北韓の戦争指導本部を含む指揮部を直接狙って反撃、報復する」と警告した。任本部長は「大量反撃報復」の概念を導入するとし、大量のミサイルなどを動員して体制中枢部を同時多発的に攻撃し、特殊部隊を投入するとした。聯合ニュースによると、韓国軍筋は、これは「平壌の一定区域を地図上から完全に消滅させる概念と見なせば良い」と説明したという。地対地弾道ミサイルの「玄武2A」(射程300キロ)、「玄武2B」(同500キロ)、巡航ミサイル「玄武3」(同1000キロ)などのミサイルを総動員するという。
 また、聯合ニュースによると、韓国軍は核兵器の使用兆候が出た場合に、金正恩党委員長など戦争指揮部を排除する任務を負った特殊作戦部隊を編成したという。この間、韓国で出ていた「斬首作戦」を担う部隊とも思える。韓国政府は公式には「斬首作戦」という言葉を否定しているが、それに近い考え方といえる。同報道では、韓国軍消息筋が「精鋭化された専門の特殊作戦部隊を編成し、任務と武器体系などを発展させている。この部隊は北の指揮部を直接狙って反撃報復する作戦部隊になるだろう」と述べたと報じた。
 韓国国防部の韓民求(ハン・ミング)長官は9月21日の国会答弁で、金正恩党委員長を除去する特殊部隊についての報道について「そうした計画がある」と述べた。韓国軍が既にそうした特殊部隊を編成し終えているのかどうかはメディアによって異なるが、計画があることを国防部長官も認めた。
 北朝鮮が金正恩党委員長を「最高尊厳」としている中で、こうした特殊部隊編成を公開することが北朝鮮側の反発を招くことは必至だ。

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