投票結果を待つ「本土派」の若者たち(C)EPA=時事

 

 インタビューに応じた方志恒氏は香港の政治学者で、香港教育大学副教授。香港の独自性や香港人のアイデンティティに着目し、編著『香港革新論』で香港と中国を明確に区別し、香港の主体性の確保にポイントを置いた「内部自決」や「永続自治」を掲げた主張を展開した。いま香港で最も注目される若手論客の1人で、9月の立法会選挙で本土派とされる「雨傘勢力」が躍進した香港の現状と未来について聞いた。

 

香港政治の構造的変化

野嶋:9月4日に行われた香港立法会議員の選挙では、「本土派」などと呼ばれている雨傘運動で台頭した新しい勢力が6人も当選しました(2016年9月7日「終わらぬ雨傘:『香港選挙』で中国が憎む『本土勢力』が躍進した理由」参照)。これは中国にとって大きなショックだったはずだと思います。なぜ、このような結果になったのでしょうか。

方志恒:この選挙の特徴は、非常に高い投票率(58%)であったことによって、建制派(親中派)の組織票に打ち勝ち、反対派(民主派や本土派)が重要な法案などの否決権(3分の1)や、議会運営のルール改正(直接選挙の過半数)を維持したことになりました。その意味では、基本的な政治構造はしばらくこう着状態が続くことになります。

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