10月4日、2016年度第2次補正予算案が衆院を通過し、公明党の井上義久幹事長(中央)と握手する安倍晋三首相(左)(C)時事

 永田町に年末・年始解散論が浮上した。きっかけは安倍首相の指示だったが、公明党・創価学会が煽(あお)り、解散風は強まりつつある。
 自民党は毎年1月に招集される通常国会前の日曜日に党大会を開催するのが通例になっている。来年も1月15日の日曜日に都内のホテルを予約し、準備をしていた。ところが、下村博文幹事長代行から党大会の日程について連絡を受けた首相は、国連総会出席のために9月18日からニューヨークに出発する直前に、「党大会は3月に延ばして欲しい」と下村氏に指示した。下村氏から首相の意向を聞いた二階俊博幹事長は予約を取りやめ、党大会を3月5日の日曜日に延期することにした。
 首相は延期の理由について、明確にしなかった。このため、「首相が党大会を延期するのは、来年1月の通常国会冒頭解散、2月総選挙を考えているからではないか」という観測が浮上した。

「拒否するわけにはいかない」

 解散論の広がりに拍車をかけたのが、公明党と創価学会の動きだ。
 9月28日、公明党の山口那津男代表は都内で講演し、「ここから先は任期中、いつ解散があってもおかしくない。(衆院議員の任満了まで)余りある時間があるわけでもない。常在戦場で自身を磨けと言っている」と述べた。山口氏は「首相が(解散を)決断すれば拒否するわけにいかない。『準備ができてないからやめてくれ』という与党では困る」とも語って、選挙準備を急ぐ考えを明らかにした。
 首相の自民党大会延期指示の直後、今夏に首相が衆参ダブル選を検討した際、賛成しない意向を伝えていた山口氏が同調するかのように早期解散支持を表明したことから、与党内では解散論が一気に広まることになった。山口氏が早期解散支持に踏み込んだのは支持母体の創価学会の意向を受けたものだ。
 来年夏は学会が重視する東京都議選を控えている。学会は都議選に向けて、全国各地から支持者が上京し、都内の友人、知人らに投票を依頼する「全国応援」の態勢になる。このため、都議選の前後3、4カ月は衆院選を避けたい考えで、自民党にも水面下でそうした意向を伝えている。特に来夏の都議選では、7月の知事選で自公推薦候補に圧勝した小池百合子知事が「小池新党」を起ち上げ、独自候補をぶつけてくるのではないかという見方が出ている。その場合、公明党も苦戦は必至で、これまで以上の支援が必要になることから、「衆院選が重なることは絶対に避けなければならない。慎重な山口氏があそこまで踏み込んだのは、学会の強い意向を受けてのものだ」(公明党幹部)というわけだ。

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