韓国などでは、北朝鮮が党創建記念日である10月10日前後に核実験や、ミサイル発射などの挑発行動に出るのではという予想が出たが、北朝鮮はこうした軍事的な挑発行動を取らない「肩すかし戦術」を取った。今年は党創建71周年と、5年、10年という区切りの年でないこともあり、軍事パレードなど大規模行事もない極めて控え目な党創建記念日であった。だが、それは北朝鮮が挑発行為をやめたということではない。

金正恩氏の錦繍山太陽宮殿訪問もなし

 党創建記念日に金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長、黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長、朴奉珠(パク・ポンジュ)首相、崔龍海(チェ・リョンヘ)党副委員長など党政治局常務委員をはじめとする党、国家、軍の幹部が金日成(キム・イルソン)主席や金正日(キム・ジョンイル)総書記の遺体が安置された錦繍山太陽宮殿を訪問したという報道はあったが、金正恩(キム・ジョンウン)党委員長が訪問したという報道はなかった。金正恩党委員長は9月9日の建国記念日にも錦繍山太陽宮殿を訪問していない。金日成主席、金正日総書記の威光を借りながら権力基盤を固めてきた金正恩党書記がなぜ続けて錦繍山太陽宮殿を訪問しなかったのか気になるところである。区切りの年でないこともあり、党創建記念日の中央報告大会の報道もなかった。
 北朝鮮は、今年に入り核実験やミサイル発射など挑発的な行為を続けて来たが、党創建記念日に米韓両国などが予測した挑発行為に出なかった背景に、どのような思惑があるのだろうか。
 党機関紙「労働新聞」は9月22日に金正恩党委員長が第5回核実験に寄与した関係者と記念写真を撮ったと報じた。金正恩党委員長は3月15日報道の弾道ロケットの大気圏再進入環境シミュレーションでの現地指導で「核攻撃能力の信頼性をより高めるために、早いうちに核弾頭の爆発試験と核弾頭装着可能な数種類の弾道ロケットの試射を断行する」と述べた。北朝鮮は今年に入り20発以上のミサイル発射を繰り返し、9月9日の「核弾頭の爆発実験」を行ったことで、3月15日に報道された「最高指導者の指示」はすべて行った。核実験関係者との記念撮影はその仕上げ行事だったといえる。金正恩党委員長は、この写真撮影で、今年の核・ミサイル開発活動に一区切りを付けた感じがある。しかし、それは挑発行為をやめるという意味ではなさそうだ。

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