10月4日、ベルリンでの記者会見にビデオ回線を通じて参加したアサンジ容疑者 (c)EPA=時事

 米大統領選挙の投票まであと2週間。
 巧みな選挙戦略で支持を大きく拡大し、ワシントン・ポスト紙などの世論調査で、選挙人の獲得予想が過半数の270人を超えたクリントン陣営にとって、いま最も警戒すべきは「オクトーバーサプライズ」だ。10月に、突然不利な情報が公開され、窮地に陥ってしまう危険な工作である。
 想定されるのはやはり、ロシアがサイバー攻撃によって得たクリントン候補に関する未公開の重大情報を情報公開サイト「ウィキリークス」が突然アップする、という悪夢のリスクである。
 そんな事態を防ぐためか、エクアドル政府がこのほど、在ロンドン・エクアドル大使館に滞在するウィキリークス創始者、ジュリアン・アサンジ容疑者のインターネット接続を遮断していたことが分かった。

エクアドル政府、対米配慮か

 アサンジ容疑者の同大使館滞在は2012年以来4年を経過し、長期化しているが、エクアドルがアサンジ容疑者の滞在に対して一定の制限を設けたのはこれが初めてだ。
 彼は外部との連絡に、携帯電話、コンピューター、訪問者を使っているとみられ、米情報機関などの監視下にあるが、インターネットの接続を断つだけで、ウィキリークスという組織による情報公開の動きを封じることができるのかどうか、明らかではない。
 ケリー米国務長官が9月末エクアドル政府に対して、アサンジ容疑者による米民主党関係者のeメール情報の公開をやめさせ、米大統領選挙に干渉しないよう要求したためだ、とウィキリークス側は非難している。これに対して米国務省は否定声明を発表した。
 しかし、エクアドル政府としても、アサンジ容疑者の大使館滞在が対米関係に摩擦を及ぼしている事実は否定できない。クリントン氏が勝利して大統領に就任すれば、エクアドル政府はロシアとウィキリークスによる選挙妨害を助けたと非難され、米・エクアドル関係が一層悪化する恐れがある。また、ヒスパニック系米国民や中南米諸国民が強く嫌うトランプ候補を助けるアサンジ容疑者の行動を止めたいのもエクアドルの本音だろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。