10月25日、朴槿恵大統領の謝罪会見報道に見入るソウル市民 (c)AFP=時事

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権が「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」で、任期を1年4カ月残し、機能不全に陥っている。側近の不正疑惑や経済不況などで苦境にあった朴槿恵大統領は10月24日、国会での施政方針演説で、それまでの姿勢を一変させ、再選を禁止した憲法を改正することを提案した。憲法改正を提案することで、政局の焦点を側近不正疑惑などから改憲に向かわせ、状況を転換する戦術とみられた。

1台のタブレットの破壊力

 しかし、1台のタブレットが、朴槿恵大統領の思惑を壊しただけでなく、朴槿恵政権を根元から揺るがせる事態を生み出した。有力紙、中央日報系列のケーブルテレビ総合編成チャンネル(総編)「JTBC」は朴槿恵大統領の改憲提案演説の数時間後、朴槿恵政権の影の実力者といわれてきた女性、崔順実氏のタブレット・パソコンを入手したと報じた。それを分析した結果、崔順実氏が大統領の演説文を事前に入手していただけでなく、それを手直ししていた事実が明らかになったとした。このタブレットには、約200件の文書が入っており、大統領の演説文も44件入っていた。韓国には「大統領記録物管理法」という法律があり、大統領府(青瓦台)の文書を流出させた者は7年以下の懲役または罰金刑が課せられる可能性がある。
 李元鐘(イ・ウォンジョン)青瓦台秘書室長は10月21日、国会の国政監査の場で崔順実氏が大統領の演説文を書き直しているとの疑惑に対し「封建時代にもありえない話」と一蹴したが、封建時代にもあり得ないことが朴槿恵政権下で行われていたことが明らかになった。

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