「シンガポール合意」から覗く北朝鮮の狙い

執筆者:平井久志2008年5月号

食糧危機が伝えられる北朝鮮だが、なぜか落ち着き払い、二〇一二年の“節目”を待つ。その皮算用は――。 どうやら「シンガポール合意」が成立したようだ。 四月八日にシンガポールで行なわれた協議で、米国のヒル国務次官補と北朝鮮の金桂冠外務次官は、濃縮ウラン製造とシリアへの核技術協力という北朝鮮をめぐる問題点をどう処理するかについて大筋で合意したもようだ。 この原稿を書いている時点では詳細はわからないが、プルトニウムを使った核開発については六カ国協議の議長国である中国に正式に申告し、焦点の濃縮ウランやシリアへの核技術協力については米朝が秘密文書や非公開の覚書の形にまとめることにしたのではないかとみられている。特に微妙な部分については、米国の主張に対して北が「ある種の認識」を示すという間接是認の方式で処理する可能性が指摘されている。「シンガポール合意」には、まだ、抽出プルトニウム量の特定などを含め、最終的に合意し、それぞれが本国の承認を得る手続きが残っている。しかし、合意の結果、どのような形であれ、北の核問題を解決するための第二段階(核の無能力化)が実現すれば、米国はその引き換えとして、北に対するテロ支援国指定の解除に向かわざるをえないだろう。

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