会談はしたけれど、当然ながら、まだギクシャクした雰囲気が漂う2人(C)AFP=時事

 

 周知のとおり、米国大統領選挙は民主党大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官が勝利するという事前の大方の予想は覆され、共和党候補のドナルド・トランプ氏が歴史的勝利を収めた。

 投票日直前まで、トランプ氏は果たして敗北を受け入れるのか、あるいは敗北後の共和党の再建はどうなるのか、などといった議論が現地メディアでは展開され、クリントン候補の勝利が当然視されていた。だが、トランプ氏の勝利によって、将来が大きく変化してしまった関係者が各方面に数多く存在している。クリントン新政権発足を当然視し、政権入りを狙っていた民主党関係者もそうした人々であろう。また、大統領選挙キャンペーンでトランプ氏不支持を表明する一方、クリントン候補への支持を表明していた共和党系の外交・安全保障の専門家の一部も、クリントン政権で外交政策を担当する準備をしていたため、将来が大きく変わってしまった。そして、敗北を覚悟していたトランプ陣営の関係者の一部の将来も、全く別方向へと大きく変わろうとしている。

 そんな中、米議会においてトランプ氏勝利の影響を最も大きく受けた共和党政治家はポール・ライアン下院議長(ウィスコンシン州第1区選出)であろう。大統領選挙と同時に実施された連邦議員選挙の結果、米議会下院は上院とともに第114議会(2015年1月~2017月1月)に続き、共和党が第115議会(2017年1月~2019月1月)でも多数党の立場を維持することとなった。だが、大統領選挙で仮にクリントン候補が当選していたならば、下院共和党の保守派の議員連盟である「フリーダム・コーカス」やトランプ氏支持派の下院議員の反発で、ライアン下院議長再選阻止の動きが活発化していたかもしれない。また、たとえ下院議長職に再選できたとしても、クリントン民主党政権と対峙しつつ責任ある形で統治を行わなければならない立場に置かれ、ホワイトハウスと妥協を図ろうとすると共和党保守派議員の突き上げを受け、厳しい状況に陥ることは不可避であったであろう。

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