エールフランス―KLM航空によるイタリアのアリタリア航空の買収交渉が決裂した。アリタリア経営陣が三月中旬にエールフランス側からの総額七億五千万ユーロ(約千二百億円)の買収提案を受け入れたにもかかわらず、労組が二千百人の人員削減や貨物部門売却などを柱とした再建案に反対したためだ。アリタリアのプラート会長は「この呪われた会社はエクソシスト(悪魔払い)にしか救済できない」と言い捨てて、辞任した。 慌てたアリタリア側は再交渉を求めたが、エールフランスのスピネッタ会長は「話がまとまるかは労組と会社次第」と買収提案を変えない姿勢を示した。 アリタリアはイタリア政府が株式の四九・九%を保有するが、格安航空や自由化で欧州域内の競争が激しくなり、ローマ―ミラノ便の国内線や欧州・米国への国際線では、単独で生き残るのは難しくなっている。一日に約百万ユーロ(約一億六千万円)の損失を出し続けているうえ、負債総額は二月末で十三億七千万ユーロ(約二千二百億円)に達する。手元資金は株式などの売却で一時よりは増えたが、このままでは経営破綻してもおかしくないとの見方が根強い。 労組が再建案に強硬に反対した背景には、アリタリア売却を進めていた中道左派のプロディ政権の崩壊がある。四月十三日と十四日の総選挙では、ベルルスコーニ前首相が率いる中道右派連合が勝利する可能性が高い。ベルルスコーニ氏が労組の支持を取り付けるために「国内の資本主導で救済する」とぶち上げたことも、抵抗勢力を勢いづかせる結果となった。

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